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24.03.25
不動産
違反しないために知っておきたい不動産広告のルール
不動産業界で、入居者を募集したい、見込み客にアプローチしたいとなったら、必要なのが広告です。しかし不動産業界には細かい独自のルールがあり、通常の広告なら問題にならないことでも、罰則や違反金の対象になってしまう場合があります。
違反する気がなくてもいつの間にか違反していた! という事例もあるため、不動産広告を出稿する前にはしっかりと知識をつけておくことが必要です。
この記事は、
「不動産広告を出稿する方法を調べたい」
「不動産広告にどんなルールがあるのかを知りたい」
「ルールを守って効果的な広告を出したい」
と考えている、不動産業の広告担当者、経営者の方のために書かれています。
知らない間に違反をして、罰則を受けたり違約金を払ったりするのは避けたいですよね。
効果的な広告を出稿するために、この記事をぜひ役立ててください。
全国600社以上の工務店・ハウスメーカー・住宅会社様の「Webでの集客アップ」のお手伝いをしている株式会社新大陸が執筆しています。
▼著者紹介
不動産広告の法律と規制について
不動産広告には、いくつかの法律と規制が関わってきます。
代表的なものは
・宅地建物取引業法
・不当景品類及び不当表示法
・不動産の表示に関する公正競争規約
です。ここでは、それぞれについて簡単に説明していきます。
宅地建物取引業法
【宅地建物取引業法のポイント】
・宅建業法と略される
・管轄は国土交通省
・対象は不動産業界のみ
・違反すると行政罰がある他、指示処分、業務停止処分、免許取り消し処分になることも
宅地建物取引業法とは、国土交通省が所管している法律です。宅建業法と略されることもあります。
宅地建物取引業とは
・宅地/建物の売買または交換
・宅地/建物の売買、交換または賃借の代理
・宅地/建物の売買、交換または貸借の媒介
を行うことです。
宅地とは、現在建物が建っている土地、または建物を建てる目的で取引される土地のことを指します。
このような宅地建物取引業が対象となる法律が宅地建物取引業です。
宅地建物取引業を営むためには、国土交通大臣または都道府県知事から免許を交付される必要があります。
違反者に対する行政罰が設けられており、違反すれば指示処分や業務停止処分のほか、免許取り消し処分になることがあります。
消費者保護の観点から制定されていて、不動産取引契約に関するルールを定めているものです。不動産取引は大きな金額が動きます。過去には不動産業者による虚偽の告知や隠ぺい、契約内容の不明瞭さが原因で消費者トラブルに繋がったり、価格操作や詐欺的な取引で消費者が経済的損失を被ったりする事案もありました。
このようなことから消費者を守るために制定されたのが宅建業法で、不動産業界の健全な成長を支えています。
不当景品類及び不当表示法
【不当景品類及び不当表示法のポイント】
・景品表示法と略される
・管轄は消費者庁
・対象は不動産業界だけではなく全業種の広告
・違反すると行政指導が入り、課徴金が課せられることもある
・景品表示法を遵守するため、不動産業界では「不動産の公正競争規約」という自主規制を設けている
不当景品類及び不当表示法は、不動産業界だけでなく、全ての業種音広告が対象です。
消費者庁が管轄していて、チラシなどの紙媒体の他、SNS広告やポータルサイトなど、インターネット上の広告も規制の対象となっています。
不当景品類及び不当表示防止法は、不当な表示を禁止し、消費者の利益を守るための法律です。広告に誇張した情報が掲載されていたり、誤認を誘うような文言が書かれていたりすると、一般消費者の利益が損なわれるおそれがあります。契約が消費者に不利にならないように、広告類の表示内容が厳しく制限されているのです。
法律に違反して不当な表示の広告を出した場合には行政指導が入ります。課徴金が課せられることもあるため、内容を精査して広告を作成する必要があります。
景品表示法を遵守するために、不動産業界では「不動産の表示に関する公正競争規約」という自主規制を設けています。この規約は、協議会に加盟している不動産業界団体が申し合わせたものであるため、規制対象は加盟事業者団体の会員のみです。
不動産の表示に関する公正競争規約
【不動産の表示に関する公正競争規約のポイント】
・表示規約、広告規約と呼ばれている
・政府(公正取引委員会)が認定
・全国各地に設立されている「不動産公正取引協議会」が表示規制の改正作業や違反した不動産会社への警告などを行っている
不動産の表示に関する公正競争規約は、政府の公正取引委員会が認定した、不動産の広告に関する不動産業界の約束事です。
不動産業界では、表示規約、または、広告規約と呼ばれています。
この表示規約が最初に作られた1963年から10回以上の改正が行われ、不動産の広告に関する最も詳細な規制として不動産会社に広く遵守されています。
例えば、顧客が物件を正確に比較検討するために、表示方法や単位を揃える「物件の内容・取引条件等に係る表示基準」というルールなどです。他にも、用語の定義づけが明記されるなど、顧客と不動産会社が共通認識をもって取り引きをできるように配慮された規約内容もあります。
表示規制の改正作業や違反した不動産会社への警告などを行っているのは、全国各地に設立されている「不動産公正取引協議会」です。
不動産広告の具体的なルール
前項では、不動産広告に関する法律や規制がいくつかあることを説明してきました。ここからは、不動産広告に係る具体的なルールを解説していきます。
誇大広告の禁止
誇大広告の禁止は、不当景品類及び不当表示法(景品表示法)と宅地建物取引業法によって禁止されています。
誇大広告とは、実際よりも有利だと消費者に誤認させるような表示や、事実と明らかに異なる表示を含む広告のことです。
例えば、事実と明らかに異なる表示を含む広告には、おとり広告が挙げられます。
おとり広告とは、実際には取り引きすることができない物件を掲載している広告のことです。
おとり広告の事例としては、
・契約済みであり実際には取り引きできないにもかかわらず新規に広告し、8年7ヶ月以上の長期継続して広告した事例
・広告に表示していた賃料と、実際に契約した賃料が異なり、実際には表示の賃料で取り引きする意思がなかった事例
・表示にかかる物件が自社の管理物件をもとに賃料や面積、間取りなどを改ざんした実在しないものであり、実際には取り引きすることができない事例
などがあります。広告として表示しているにも関わらず、その内容で契約ができないものはおとり広告となります。物件内容を改ざんするなど、明らかに問題のある行為のほか、取り引き後にうっかり広告の削除がなされないままとなっている場合も違反となるため注意が必要です。
おとり広告の他には、根拠のない表現も誇大広告に該当します。具体的には「日当たり抜群」や「公園すぐ」のような表現です。物件に関する有利な情報を表示する際には、客観的な根拠もあわせて明示する必要があります。
広告開始時期の制限
宅地建物取引業法によって、造成完了前の宅地と工事完了前の建物に関しては広告開始時期の制限があります。
造成完了前の宅地の広告を出稿できるのは、開発行為の許可を得てからです。工事完了前の建物に関しては、建築確認申請が必要です。
【開発行為の許可とは】
都市計画法第29条で定められている、宅地造成などを行う場合に必要な許可のことです。
開発行為を行う前に、知事や市長に申請して許可を得る必要があります。
【建築確認申請とは】
建築確認申請は、世の中から違法建築物を排除するためのもので、新築工事や大規模な増改築工事等を着手する前に必要です。確認検査機関、もしくは特定行政庁に必要書類を添えて申請し、建築基準法や条例に適合しているか確認を受けることを指します。
取引態様の明示
取引態様の明示も、宅地建物取引業法によって定められているものです。
不動産会社では、自社で所有する物件だけではなく、売主に代わって取り引きしている物件や、売主と買主の仲介として取り引きしている物件もあります。
不動産広告では、自社が「売主」なのか「代理」なのか「媒介(仲介)」なのかを明示する必要があります。
それぞれの取引態様を簡単に説明すると以下の通りです。
・売主/所有している物件を自ら取引する
・代理/不動産会社が売主の代わりに取引を行う
・媒介(仲介)/不動産会社が売主と買主の間に入って取り引きを行う
広告表現の規制
景品表示法や宅地建物取引業法を遵守するために不動産業界の自主規制として作られた、不動産の表示に関する公正競争規約で決められている、広告表現の規制について解説します。
不動産広告に情報を載せる場合、特定の項目に関して表示基準があります。特定の項目とは主に、物件所在地・各種施設までの距離または所要時間・交通アクセス・面積・写真・絵図などです。基準には以下のようなものがあります。
各種施設までの距離または所要時間:
「〇〇駅より徒歩5分」という表示をする場合、80メートルで徒歩1分とする。
面積:
土地の面積はメートル法で表示する。建物の面積は延べ面積を表示する。車庫や地下室などの面積を含む場合は、その旨と面積も表示する必要がある。
写真:
写真は取引するものの写真を表示する。ただし未完成の建物の場合は、一定の要件を満たしている完成予想図などであれば表示することができる。
このような基準が設定されていることで、消費者は安心して物件を比較して検討することができます。
特定用語等の使用基準
不動産の表示に関する公正競争規約では、特定用語等の使用基準も定められています。
例えば「LDK(リビングダイニング・キッチン)」は、居間と台所と食堂の機能が1室になっていて、必要な広さがある部屋のことを指します。
「新築」は、建築後1年未満で、誰も入居したことのない物件のこと。「新発売」は、新たに造成された宅地または新築の住宅で、初めて購入申し込みの勧誘を行うことと定義されています。
また、原則として使用してはいけない用語も定められています。
使用してはいけない用語の例は「完全」「完璧」「万全」「日本一」「抜群」「特選」「厳選」「最高級」「極」「買い得」「バーゲンセール」など、多岐にわたります。広告用語としてよく使われている言葉が含まれるので、広告を出稿する前によく確認することが必要です。
二重価格表示の原則禁止
二重価格表示とは、実際に販売する価格と別の価格を表記する表示方法です。
二重価格表示に該当するのは以下のような場合です。
・通常6000万円の一軒家が、今なら5000万円
・2年契約の賃貸住宅の家賃から毎月1万円をキャッシュバックする
2年契約の賃貸住宅の家賃から毎月1万円をキャッシュバックというのは、一件値引きの一種に見えますが、2年間の契約期間すべてにおいて毎月1万円キャッシュバックするということは、実際の家賃が月額9万円ということになります。これを安く見せかけるために10万円という架空の家賃を比較対象家賃として表示している、と捉えられるのです。
二重価格表示は、消費者の判断を惑わし不利益を与える可能性があることから原則として禁止されています。
しかし、条件を満たしているものは違反にあたりません。
・旧価格の公開日および値下げした日が明示されている
・旧価格は値下げ直前の価格である
・旧価格は値下げ前2ヶ月以上にわたり、実際に販売のために公表している
・値下げ日から6ヶ月以内に表示している
・賃貸物件ではない
・旧価格の公開日から二重価格表示を実施する日まで、物件の価値に同一性が認められる
・土地又は建物について行う表示である
これ以外にも、割引プランや特定の施工条件などによって価格が安くなるケースは二重価格表示の体裁をとる必要がある場合があります。
不動産広告の違反事例一覧
不動産広告のルールは複雑です。他の商品の広告ではよく見かけるものでも、不動産広告の場合はNGということも良くあります。悪意がなくても、うっかりで違反となってしまう場合もあるのです。
ここでは、過去に起こった不動産広告における違反事例を紹介します。
【①不当表示を行っていた事例】
対象となった広告:不動産ポータルサイトの賃貸住宅に関する広告
違反内容:契約は可能だが、締結時に表示内容と異なる条件が提示された
違反に対する措置:厳重警告・違約金
こちらは、おとり広告に該当するケースです。
広告に表示されていた家賃よりも実際は1万円高い賃料で賃貸借契約をしています。表示していた金額で取り引きするつもりがなかった点が問題視されました。
【②契約済み物件を広告し続けていた事例】
対象となった広告:不動産ポータルサイトの賃貸住宅に関する広告
違反内容:不動産ポータルサイトに掲載していた物件が、すでに契約済みであった
違反に対する措置:厳重警告・違約金
契約済みの物件を、不動産ポータルサイトに掲載し続けたことで違反になりました。契約できない物件を載せていた、おとり広告にあたります。
【③契約済み賃貸物件の募集情報を、実際の物件と異なる間取り図で掲載】
対象となった広告:不動産ポータルサイトの賃貸住宅に関する広告
違反内容:契約済みの賃貸物件情報を、実際の物件と異なる間取り図で掲載
違反に対する措置:厳重警告・違約金
実際の物件と、部屋の向きや設備等の記載に相違があり、不当表示に該当すると判断されました。また既に契約済みの物件でもあり、おとり広告にも該当しています。
不動産広告で違反しないための注意点
悪意がなくても違反になってしまう可能性のある不動産広告。違反をしないためには、丁寧なチェックが必要になります。
主な注意点は以下の3つです。
①違反にあたる言葉がないかチェックする
②広告出稿前に承認をもらう
③掲載している情報を定期的にチェックする
以下で詳しく説明していきます。
①違反にあたる言葉がないかチェックする
不動産の表示に関する公正競争規約では、使用が禁止されている言葉が細かく設定されています。「日本一」や「業界初」などの「〇〇一」「〇〇初」といったものや、「極」や「特選」など、該当する言葉を使っていないかチェックしましょう。
自分だけではなくて、ダブルチェックを行う、ツールを使うなど、対策していくことが必要です。
②広告出稿前に承認をもらう
基本的に、不動産会社は自社の判断だけで出稿はできません。広告出稿前に承諾をもらう必要があるのですが、その相手は物件の種類によって異なります。
【物件の種類別、承諾をもらう相手】
・自社が媒介契約を締結している物件……売主
・他社が媒介契約を締結している物件……媒介契約をしている不動産会社
・他社が売主や売主代理になっている物件……売主代理になっている不動産会社
③掲載している情報を定期的にチェックする
契約できない物件・実際とは異なる金額・実際とは異なる間取りなどで掲載されている物件は、違反になります。悪意がなくても対象となるため、掲載情報に古いものがないか定期的にチェックしましょう。古い情報をそのまま掲載していると、知らない間にそれがおとり広告になってしまうおそれがあります。
顧客の気を引くために事実と異なる広告は絶対に出さないことはもちろん、意図せず違反をしてしまわないように注意しましょう。
不動産広告の媒体と活用方法
最後に、不動産広告にはどのような媒体があるのか、そしてどのように活用すればいいのかを簡単に紹介します。
不動産広告の媒体
不動産広告の媒体には、チラシや看板、雑誌や新聞などオフラインのもの、SNS広告やリスティング広告、ポータルサイトに掲載する広告などオンラインの広告があります。
どれが一番いいとは一概に言えず、それぞれの媒体の良さがあります。ターゲットや目的によって使い分ける、併用していくことで効果を発揮することができます。
例えばチラシのポスティングや看板は、対象地域の人に幅広く情報を届けることができて認知度の向上に役立ちます。
また、チラシのメリットは保存性が高いことです。キャンペーンや粗品の引換券などをつけて捨てられないようにして、イベントや問い合わせに繋げやすくすることもできます。
新聞や雑誌広告は掲載されるまでの審査が厳しいので、信頼できる企業だと印象付けることにも繋がります。
オンライン広告には、ターゲットを細かく設定できることがメリットとしてあります。
物件を探している人は、引っ越し先を検討しているなどで遠く離れた所にいることが多いです。
地域名+キーワードで、興味がある人に広告が表示されるようにする。
ポータルサイトに登録して、地域で検索したときに自社が表示され、選択肢の中に入るようにする、という広告の出し方をすることで顕在層にアクセスしやすくなります。
オンライン広告はどれだけ結果に繋がっているかの効果測定もしやすいため、より効果の高い広告になるように改善をしながら活用していきましょう。
不動産広告の活用事例
広告を利用して問い合わせが増えた・契約数が伸びたという事例をいくつかご紹介します。
リスティングとSNS広告でイベント来場者数UP
注文住宅メーカーの、WEB広告を中心とした施策の成功事例です。
資料請求やお問い合わせ、イベントの来場予約の獲得を目的として運用を開始しました。
リスティング広告・SNS広告、InstagramやPinterestなどのSNS運用を、サイトへの導線を意識して実行。Instagramは1年間で1万人のフォロワーを獲得、イベントの来場者数も目標を達成。来場のきっかけの7割はSNSでした。
WEB広告とオフライン施策両方からアプローチ、CPAが30,000円から19,000円に
こちらも住宅メーカーの広告運用の成功事例です。
オフライン広告中心の施策ではコンバージョンが上がらず、WEB広告も運用開始。
広告の目的ごとに配信媒体や掲載サイトをわけ、それぞれの運用を最適化していきました。WEBだけではなく元々のオフライン施策も併用。コンバージョンは、月21件だったものが148件まで伸び、CPAも30,000円から19,000円までダウンしました。
まとめ
新規顧客を獲得するため、契約数を増やすために、広告は効果的な方法です。しかし、不動産広告には他の業界にはない細かなルールがあります。
・宅地建物取引業法
・不当景品類及び不当表示法
・不動産の表示に関する公正競争規約
これらのルールを遵守する必要がありますが、複雑なため、そのつもりがなくても気付いたら違反していた、ということもあり得ます。
専門家に依頼することで、ルールを確実に遵守した広告で効果をあげることも可能です。
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