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Marketing columnマーケティングコラム

24.03.25

不動産

おとり広告とは何か?違反しないためのポイントと事例

広告には、消費者を守るために様々なルールがあります。中でも不動産業界には、独自の業界ルールもあり、違反しないためには専門的な知識が必要です。

違反をするつもりはなかった場合でも、うっかりルール違反をしている場合もあります。

この記事は

「不動産の広告を出したいけれど、ルールが複雑だから確認したい」

「不動産広告で、違反をしないポイントを知りたい」

「どんな広告がおとり広告になるのかを知りたい」

と考えている、不動産業界の広告担当者、経営者の方は、ぜひ広告を出すときの参考にしてください。

全国600社以上の工務店・ハウスメーカー・住宅会社様の「Webでの集客アップ」のお手伝いをしている株式会社新大陸が執筆しています。

▼著者紹介

辻下 裕昌

プロデューサー

辻下 裕昌

圧倒的な知識量と時代の空気を読む独自視点で、一歩先を行く戦略をご提案するプロデューサー。 特にInstagramを積極活用するSNS運用手法に定評があり、1ヶ月でInstagramからの成約2件という成果を上げた企画力に信頼が集まる。創りたい未来、目標から逆算した緻密な戦略の構築と計画設計のPDCAを回し、中長期的に発展する企業のマーケティング体制の強化を目指す。

おとり広告とは何か?

この記事を読んでいる方は、おとり広告という言葉を一度は聞いたことがある方がほとんどだと思います。

「魅力的な言葉や物件の条件をおとりのように提示して、他の物件を売り込むきっかけにする」そんな手法に使われるためおとり広告と呼ばれているのですが、これもおとり広告になってしまうの? というようなものもあるのです。

ここでは、おとり広告の定義や目的について解説していきます。

おとり広告の定義とは

おとり広告の定義は「売る意思のない物件や売ることのできない物件について広告を行い集客すること」です。
不動産業界におけるおとり広告は、「宅地建物取引業法(宅建業法)」、不動産業界以外にも全ての広告に関係する「不当景品類及び不当表示防止法(景品表示法)」、景品表示法を守るために業界が独自に定めた「不動産の表示に関する公正競争規約(表示規約)」に違反します。

宅建業法第32条で定められているおとり広告の禁止

宅建業法第32条で定められているのは、誇大広告の禁止です。
①著しく事実に相違する表示
②実際のものより著しく優良もしくは有利であると人に誤認させるような表示
を禁止しています。
これに違反した場合は、業務停止処分や免許取り消しなどの行政処分、悪質性が高ければ罰金や懲役刑などの刑事罰が与えられることもあります。

景品表示法第5条で定められているおとり広告の禁止

おとり広告の禁止は、景品表示法第5条の「おとり広告に関する表示」によって定められています。しかし、景品表示法には違反になる表示の定義がざっくりとしか書かれていません。
解釈に差がでないようにするため、景品表示法の内容を元に不動産業界が独自に設定した規約が「不動産の表示に関する公正競争規約(表示規約)」です。
表示規約を守っていれば、景品表示法も守れるようになっています。おとり広告の禁止については、表示規約第21条で定められています。

表示規約第21条では、
① 物件が存在しないため、実際には取引することができない物件
② 物件は存在するが、実際には取引の対象となり得ない物件
③ 物件は存在するが、実際には取引する意思がない物件
を広告することを禁止しています。

表示規約は不動産業界が独自に定めた規約ですが、内閣総理大臣および公正取引委員会の認定を受けたもので、表示規約に違反すると不動産公正取引協議会から警告や違約金などが課せられます。

おとり広告の目的とは

おとり広告の目的は、実際の物件情報と異なる、より魅力的な広告を出して問い合わせや来店をうながし、別の物件を契約させることです。

顧客は、広告されている物件を見て問い合わせても「その物件は売れてしまいました」とか「キャンペーンが終了してしまったんです」といって契約できず、代わりに別の物件を紹介されます。
顧客が本来契約したかった物件とは別の物件や別の条件を提示されるため、おとり広告は顧客にとって不利な交渉になります。そうなることを防ぐために、法律でおとり広告は禁止されているのです。

おとり広告の意思の表示とは

売る意思のない物件の広告をすることはおとり広告になってしまいます。では、売る意思がない広告とは、どういうことでしょうか。

例えば、存在しない物件は売ることができないですよね。実際には物件がない場所の住所を掲載して広告を出していたら、それは売る意思がないと捉えられます。

他にも、広告に掲載されている物件について顧客が問い合わせてきたけれど、その物件を案内せずに他の物件を紹介する、問い合わせに答えないということも該当します。

このように、広告に出ている条件で契約できないものは売る意思がないと捉えられるのです。
そのため、既に契約済みの物件の広告をポータルサイトから取り下げるのをうっかり忘れていた、という場合でもおとり広告に入ってしまいます。契約が決まった物件は広告を取り下げるというのを徹底するように注意しましょう。

おとり広告の違反しないためのポイントは?

おとり広告と認定されてしまうと、業務停止や罰金、懲役刑など罰則が与えられる可能性があることをお伝えしました。
しかしルールが複雑なため、専門的な知識がないと知らないうちに違反していたという場合もあります。不動産以外の商品だったら違反にならないけれど、不動産の場合は使ってはいけないという言葉もあるのです。
ここでは、おとり広告としてルールに違反しないためのポイントをご紹介します。

おとり広告の表示に注意するポイント

おとり広告の表示に注意するポイントとしては、誇大広告があります。
誇大広告とは、実際以上に利点を強調して、魅力的に見せる広告のことです。根拠がない表現は、誇大広告と判断される可能性があります。

例えば、不動産の広告では「値上がり確実」「最大規模」「最高級」などは、客観的根拠を示すことが難しいです。他にも、「当社だけ」「投売り」「掘出」「日当たり抜群」や「公園すぐ」といった情報も該当します。
このように、実際より有利であるかのように誤解させる広告は宅建業法で禁止されています。

物件に有利な情報を表示する際には、面積をメートル法で示す、東向き・南向きの物件、〇〇から徒歩〇分などと記載して、客観的な根拠となる情報を明示しましょう。

おとり広告の費用表示に注意するポイント

不動産の広告を出すときは、二重価格表示にならないよう気を付けなければいけません。
例えば
「通常3,000万円のところ今なら2,500万円」
「2年契約の賃貸住宅の家賃から毎月1万円をキャッシュバックする」
といった記載をすることは原則禁止されています。

2年契約の賃貸住宅の家賃から毎月1万円をキャッシュバックというのは、一件値引きの一種に見えますが、2年間の契約期間すべてにおいて毎月1万円キャッシュバックするということは、実際の家賃が月額9万円ということになります。これを安く見せかけるために10万円という架空の家賃を比較対象家賃として表示している、と捉えられるのです。

ただし、全ての場合で二重価格表示が禁止されているわけではありません。
二重価格表示をする場合は、以下の要件に則っているか確認しましょう。

・旧価格の公開日および値下げした日を明示している
・旧価格は値下げ直前の価格である
・旧価格は値下げ前2ヶ月以上にわたり、実際に販売のために公表している
・値下げ日から6ヶ月以内に表示している
・旧価格の公開日から二重価格表示を実施する日まで、物件の価値に同一性が認められる
・土地または建物について行う表示である

また、管理費、維持費、修繕積立金または共益費、権利金、礼金、敷金、保証金、償却費等、必要な費用も掲載する必要があります。
それらの費用が実際よりも安いと誤認される可能性のある表示は、不当表示になってしまいます。

おとり広告の数量・条件表示に注意するポイント

おとり広告にならないためには、表示規約に則って広告を作成する必要があります。
表示規約は、基本的に消費者が不利にならないように設定されています。
例えば、駅から徒歩8分と表示されていた時、それが一体何mのことを指しているのか、直線距離なのか、道順に沿って計測した値なのか、もし統一されていなかったら、消費者は正確に比べることができず、不利な契約をしてしまうかもしれません。

そのため、表示規約には表示基準が明確に定められています。
表示規約は、2022年9月1日に改正されたものが最新です。(2024年2月現在)

・最寄り駅または停留所の名称および徒歩所要時間を明示する
・道路距離を表示するときは、起点および着点を明示して表示する。徒歩による所要時間は80mを1分間とし、1分未満の端数は切り上げて表示する。
・価格や賃料について、土地は1区画、建物は1戸あたりの価格を表示する。賃料については1ヶ月あたりの賃料を表示する。
・写真は原則取り引きするものの写真を表示する。未完成の建物を表示する場合、一定の要件を満たす完成予想図であれば表示することができる。
・周辺の生活関連施設について、学校や病院等は、現に利用できるものを表示する。
などです。

表示方法については、かなり細かく決まっているものもあります。
例えば駅からの所要時間について、販売戸数(区画数)が2以上の分譲物件においては、最も近い住戸(区画)と、最も遠い住戸(区画)の所要時間等も表示する必要があります。

また、A駅からB駅までの所要時間が通勤時と平常時で著しく変わるときは、朝の通勤ラッシュの所要時間を明示し、平常時の所要時間とその旨を明示して併記しなければいけません。
例:A駅からB駅まで通勤特急で35分」※平常時は特急で25分

広告に物件にとって有利になる条件を乗せるときは、その表現が規約違反になっていないか一つ一つ確認しましょう。

おとり広告の具体的事例

おとり広告には、明らかに「消費者を騙してやろう」という意図が見える悪質なものもありますが、知らなかった故におとり広告になってしまった、という事例もあります。
どのようなものがおとり広告になるのか、具体的な事例を見ていきましょう。

おとり広告の飲食業界での事例

おとり広告は、全ての業界に適用される景品表示法でも禁止されているため、不動産業界の広告以外にもあります。
参考に、飲食業界ではどのようなおとり広告があるのかをご紹介します。

2022年、有名な回転ずしチェーンがおとり広告を行ったとして措置命令が出されました。
回転ずしチェーンは、2021年9月から11月にかけてキャンペーンとして豪華な寿司のメニューを安価に提供する広告を打っていましたが、実際には多くの店舗でキャンペーン期間中販売できない期間があった状態だったという事例です。
期間中である11月26日から12月12日のうち、半分以上の日数でキャンペーン商品を提供できなかった店舗は70%強、キャンペーン商品を終日販売しない日のあった店舗が全国594店舗(当時)のうち583店舗あったのです。
キャンペーン商品の在庫がなくなる恐れがあったことから商品の販売を中止していましたが、テレビコマーシャルなどの宣伝は継続されていました。

ここで問題となったのは、大々的に広告した商品が在庫不足により提供できないという自体におちいっただけでなく、品薄状態を企業側が把握して、十分に提供できないと分かった上で広告を出し続けたことです。
キャンペーンの広告は多くの消費者にとって来店動機になっていたため、消費者側からすれば、騙されたと思ってもおかしくありません。

公正取引委員会からは、一般消費者に与えた影響は大きいとして、再発防止を求める措置命令が出されました。

おとり広告の不動産業界における事例

不動産業界におけるおとり広告でよくあるのは、契約が決まった物件広告をポータルサイトなどから消さずに掲載し続ける事例です。
意図的に行われている場合もありますが、担当者のミスである場合も多くあります。意図せず行ってしまったものでも、おとり広告になってしまうのです。
他にもいくつかの事例を紹介します。

【①不当表示を行っていた事例】
対象となった広告:不動産ポータルサイトの賃貸住宅に関する広告
違反内容:契約は可能だが、締結時に表示内容と異なる条件が提示された
違反に対する措置:厳重警告・違約金

広告に表示されていた家賃よりも実際は1万円高い賃料で賃貸借契約をしています。表示していた金額で取り引きするつもりがなかった点が問題視されました。

【②契約済み賃貸物件の募集情報を、実際の物件と異なる間取り図で掲載】
対象となった広告:不動産ポータルサイトの賃貸住宅に関する広告
違反内容:契約済みの賃貸物件情報を、実際の物件と異なる間取り図で掲載
違反に対する措置:厳重警告・違約金

これは、既に契約済みで、契約ができない物件を広告に載せていたためおとり広告とされています。さらに実際の物件と、部屋の向きや設備等の記載に相違があり、不当表示に該当するとも判断されました。

おとり広告による消費者被害の事例

不動産の大手ポータルサイト、「LIFULL HOME`S」を運営しているLIFULLが行った2022年6月の調査によると、住宅総合検索サイトで賃貸検索を利用した人のうち、約半数(46.8%)が、おとり広告とされる、募集が終了している広告に遭遇したことがあると回答しました。
調査対象を18歳から29歳に絞るとその割合は52.5%になり、若い世代の方がおとり広告の被害にあいやすいという結果になっています。
広告に載っている物件の募集が既に募集終了していた、ということの他にも、おとり広告の被害はあります。

・広告に表示されている賃貸価格や管理費と、実際に契約できた金額が異なった(広告料金よりも高い値段で契約することになった)。

・退去時に必要なクリーニング代が記載されておらず、退去時4万円以上請求された。

・広告に載っていた設備が、実際には無かった(お風呂に追い炊き機能が無かった、対面式キッチンではなかったなど)。

・広告には駅から徒歩10分と書いてあったが、実際には15分以上かかった。

・未入居(今まで一度も人が入居したことがない)と書かれていたけれど、未入居ではなかった。

・広告に掲載されていた間取りと、実際の物件の間取りが異なった。

などです。

退去時のクリーニング代などは、契約書だけではなく広告にも掲載するべきとされています。
広告に載っている情報で契約を検討していたのにも関わらず、実際に契約できた物件の条件が異なっていたという被害は多くあります。

おとり広告によって集客ができても、それは一時的なもので今はSNSや口コミサイトであっという間に悪い評判は広まってしまいます。
もし悪意がなかったとしても、それは消費者側には関係ありません。
宅建業法や表示規約などをきちんと確認して、広告を出しましょう。

まとめ

広告に出している条件で、消費者が実際に契約ができない広告をおとり広告といいます。
具体的には、
・既に契約済みの物件の広告が掲載され続けている。
・記載されている物件の設備と実際の設備や間取りが異なる。
・掲載されている賃料や管理費などと、実際に契約できる値段が異なる。
・必要な諸経費(保証料や退去時のクリーニング代など)を記載していない。
といったことが挙げられます。

また、根拠のうすい文言を載せてしまうと誇大広告となり、それもおとり広告になってしまいます。
不動産業界では他の業界の広告よりも細かで複雑なルールが決まっていて、悪意がなくてもおとり広告となってしまう場合があるのです。

宅建業法や表示規約で定められているルールを確認して、知らないうちに違反をして信頼を失ってしまうということを防ぎましょう。

そのためには専門的な知識が必要なため、確実に違反せず集客力のある広告を作るためには、専門の会社に依頼をするのも一つの方法です。

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